今日はトビケラ目 Trichoptera のお話です。トビケラ目の学名は毛の生えた翅という意味です。この毛が鱗粉に変化したという理由でチョウ目 Lepidoptera と近縁であると考えられています。写真1がトビケラ目の翅の拡大図、写真2がチョウ目の翅の拡大図です。写真を見ていただいたら分かりますが、びっしり生えてます。約14500種が記載され、世界中に分布しています。
トビケラ目は幼虫が水棲で、筒巣や巣網を造るものがいます。中でも有名なのはニンギョウトビケラ類で、山口県岩国市錦帯橋の近くに石人形博物館があり、お土産で石人形が販売されています。トビケラの産卵様式は二通りあるようで、一つはトビケラのメスが水の中に潜り、石の裏などに一粒ずつ産み付ける方式。もう一つはメスの腹端にゼラチン状の物質でくるまれた卵塊を流れの中や陸上(水際の植物や草陰など)に産み付けます。後者は卵塊の中で幼虫が孵化し、雨が降ると卵塊が雨と共に流れに移動します。幼虫は5齢期を経て蛹になり、水中から羽化してきます。翅には毛が生えているので、翅が濡れずに陸上に出てくることが出来ます。写真3はマルバネトビケラ Phryganopsyche latipennis latipennis (Banks, 1906)です。山地の中流域で見られます。
幼虫は水棲のため、河川などの水質の指標調査に用いられることがあります。水質汚濁に弱い種が多いのですが、シマトビケラ科、ムネカクトビケラ科、イワトビケラ科などには中程度の有機汚濁に耐える種が多く見られます。成虫は水辺から遠く離れることはなく、走光性もあり、河川湖沼周辺の人家の明かりや街路灯などに大量に集まって不快害虫になることもあります。