ヒロズコガ類4

今朝も寒いだろうと予測し、ダウンジャケットを着てきたのですが、昨日より寒さは少し和らいでいる感じがします。昔懐かしい「マーフィーの法則」のような・・・。

アトウスキヒロズコガ4(小)さて、今日もヒロズコガですが、今日でいったん終わりにしようかと。昨日書いたマエモンクロヒロズコガと同属で、記載されておらず和名だけがあるアトウスキヒロズコガ Monopis sp.です。これも採集したのは家の玄関で、発生源が分かりません。Monopis属は前翅中央に白い紋が見えるかと思いますが、これも特徴の一つです。鱗粉がはげてしまっていますが、展翅していない標本を写真2に示します。

アトウスキヒロズコガ前翅後縁が淡褐色になり、写真では明るく見えますが、その他はやや暗い褐色を呈します。これに似たキバガもいますが、形態的に異なるので、すぐに分かるでしょう。最後に写真3に示したクロクモヒロズコガ Psecadioides aspersus Butler, 1881です。ヒロズコガ類をこれまでいろいろと集めてきましたが、野外で採取できるものは生かして持ち帰り、家で展翅します。家屋に発生するヒロズコガ類は未だ採集できていません。特にジュウタンガ Trichophaga tapetzella (Linnaeus, 1758)は一度採集したいですね。最近はあまり見かけないということしか聞きません。知り合いの専門家でも採集したという話も聞きません。分布は汎世界となっているのですが。

 

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ヒロズコガ類3

今朝もすごく寒くて、ダウンジャケットを出さないと、と痛切に思いながら出社してきました。

アトモンヒロズコガ(小)今日の話題もヒロズコガです。私の好きなヒロズコガで恐縮です。写真1はアトモンヒロズコガ Morophaga bucephala (Snellen, 1884) です。幼虫の食餌植物は不明で、とある公園の中で6月頃採集しました。特徴的な斑紋をしているので、すぐに本種だと分かります。それから写真2はマエモンクロヒロズコガ Monopis pavlovskii (Zagulajev, 1955)です。

マエモンクロヒロズコガ(小)これは私の実家の玄関の外灯に来ていました。幼虫のエサは動物性を食するらしく、動物の皮や鳥の巣で発生するそうなのですが、私の実家の周辺は工場が多く、鳥の巣がどこかにあるのかもしれません。しかし、実家が鉄工所をやっていて、鉄材を置いてあるパレットが腐朽してきていたのですが、そこから発生したものではないかと怪しんでいます。可能性があると疑ってしまうという哀しい研究者の性ですね。

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ヒロズコガ類2

昨日は寒かったですね。札幌の知り合いは大丈夫かなと少し心配しています。

ウスバヒロズコガ(小)さて、今日も話題はヒロズコガ。昨日のブログにしだの胞子を食べるもの、アリを食べるものと書きましたが、写真1がウスバヒロズコガ Psychoides phaedrospora (Meyrick, 1935)で、幼虫がチャセンシダの胞子嚢を食べます。ウスバヒロズコガは元々ウスバマガリガとされ、マガリガ科という違う科に属していました。写真には光の加減で写せませんでしたが、翅は光の回折により薄く虹色に輝いています。

マダラマルバヒロズコガ(小)写真2はマダラマルバヒロズコガ Gaphara conspersa (Matsumura, 1931)です。幼虫はひょうたん型のポータブルケースを作り、それを移動式の巣としています。研究ではアリの巣の中や周辺にいて、朽木を食べたり、もしかしたらアリの死骸を食べているのかもしれないとされています。アリの近くにいると外敵が近づかないことを利用しているのかもしれません。まだまだ生態については研究が待たれるところです。

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ヒロズコガ類

いろいろ忙しくて、研究が少しづつしか手が付けられない状態です。年末にいろいろな人からお叱りを受けそうな気がします・・・。

ウスグロイガ今日はヒロズコガ類についてお話しようかと思います。ヒロズコガ類は衣類の害虫であるイガなどが含まれますが、アリの巣に侵入してアリを捕食するものやキノコを食害するもの、シダの胞子を食べるもの、朽木などから発生するものもいます。日本産ヒロズコガ類にはまだまだ新種が含まれていると考えられています。粘着トラップにも捕獲されているのをよく見ますが、種類が分からないものも多く見られます。

アトボシメンコガ写真1はウスグロイガ Niditinea baryspilas (Meyrick, 1937)と同定しました。これはゴキブリを飼育していたときに、飼育容器の中でうごめく幼虫を発見し、飼育したところ本種が羽化してきました。飼育容器にはダンボールをゴキブリの隠れ家として入れていたのですが、湿気などでふやけてしまい、それをエサにして発生したものと考えてます。同時にアトボシメンコガ Wagneria cerodelta (Meyrick, 1911)も発生していたので、2種の幼虫をアルコールにつけておけばよかったと後悔しています。

 

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ナガヒラタムシ

ナガヒラタムシ3(小)今日も朝からいい天気ですね。今日から三連休の人もいらっしゃるでしょう。今日は昼から調査があるのですが、道が混んでなければいいなぁ、と思ってます。

今日の昆虫はコウチュウ目の中でも一番祖先に近いのではないかと考えられているナガヒラタムシ Tenomegra mucida (Chevrolat, 1829)です。日本には、あと3種確認されています。なぜ原始的と考えられているかというと、鞘翅の構造(写真2、右鞘翅を拡大)がアミメカゲロウ目から派生したのではないかと考えられています。確かに網目模様ですね。

ナガヒラタムシ鞘翅(小)ナガヒラタムシは現存する昆虫ですが、ロシアからの化石などに原コウチュウ目と分類されたものがあり、それらの鞘翅の構造がよりアミメカゲロウ目に近縁だと考えられているからです。

現在コウチュウ目には4亜目が認められており、それらがどのように進化したかは諸説あります。形態学的に見て近縁だとされています。近縁なグループにチビナガヒラタムシ科というものがありますが、これはかつて大阪の小学校の給食作業台から大発生したという記録があり、害虫扱いされてます。その他にも今はあまり見かけませんが昔の電柱などは木製だったため、そういったものからの記録もあります。チビナガヒラタムシは、私がまだ一度も採集したことがない種です。

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リーフマイナー

ツマグロキンバエ今日の大阪はすっきりとした天気になりました。昨日は小雨がぱらついたりしていましたが、調査に出かけていました。セイタカアワダチソウにツマグロキンバエが群がっていました。最初はコシアキツマグロキンバエかと思って数個体採取したのですが、家に帰ってから見てみるとツマグロキンバエでした。その他にはクズも繁茂していて、気になるものを採取してきました。

クズのリーフマイナー(小)「リーフマイナー」ってご存知ですか? 英語でLeaf-minerと書き、植物の葉に潜る昆虫のことを指します。これが気になって採取したものです。クズに潜っていたのでクズノチビタマムシかな、と思ったのですが、よく見てみると背面にある硬皮板(少し見にくいですが黒くなっている部分のこと)の形状が少し異なり、違う種類と考えられます。あまりいじくると死んでしまうかもしれないので、腹面は見ていないのですが、小さい蛾の仲間かもしれません。本当は潜っていたのですが、会社に持参したときには脱出してました。

クズのマイン(小)

3番目の写真はクズに作られた「マイン」と呼ばれるものです。種類によってこのマインの形状が異なり、種類が分かるらしいのですが・・・。家に帰ってNeedham (1928)とHering (1951) の文献を読み返さないといけません。これはしんどいかも・・・。飼育して成虫になるまで待つ方がいいかもしれませんね。

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チャイロスズメバチ

チャイロスズメバチ今日一日はぐずついた天気のようで、こういうときは標本を調査するのはいやですね。

今日紹介する虫はチャイロスズメバチ Vespa dybowskii Andre, 1884です。日本のスズメバチの中で特異な斑紋パターンを示すので、すぐに同定が出来ます。生活も他のスズメバチとは違い、女王がキイロスズメバチやモンスズメバチの巣に侵入し、女王を殺して巣を乗っ取り、働きバチに自分の幼虫を育てさせます。

北方系の種らしく、中部以北に生息するとされていましたが、2000年以降各地で発見されており、中国地方の鳥取県・岡山県まで分布するようです。また岡山県東部の山間地での営巣が確認され、これが営巣の南限とされています。

私も採集したのは箕面の山の中で、樹液に来ていたものを採集しました。このときにはクワガタやカブト、オオスズメバチもいたのですが、それらをそっちのけで採集してしまいました。このことは大阪市立自然史博物館友の会の会誌「Nature Study」に掲載されています。私の採集品を害虫だけ選んで持ってきていますが、大学に保管してあるものも移管しなければ、と思ってます。そんなにないですけど。

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ビロウドハマキ

ビロウドハマキ今日ご紹介する昆虫はビロウドハマキです。1年に2回(6~7月と9~10月)出現します。幼虫の食樹は夏に出てくるのはカエデ、秋に出てくるのはアセビ、ツバキ、モミジ、ヤマモモ、オガタマノキです。小蛾類の仲間ですが、やや大きく、メスの翅開帳40~50mmもあります。派手な色をしているので、すぐに目に付くと思うのですが、最近はあまり見なくなったような気がします。まぁ私がフィールドにあまり出ていないのも原因のひとつだと思いますが。

でも2003年から東京の方では増加しているということです。分布は本州~屋久島、海外の分布は樺太・中国となっています。温暖化の影響で少なくなってきているのでしょうか?興味はありますが、これは専門家にお任せするとしましょう。

私が修了した研究室は、もともと小蛾類の分類で有名でした。初代、三代目~五代目の教授は小蛾類の分類をしていらっしゃったので、私も展翅は叩き込まれました(伝統的な展翅方法でしたが、今ではチョウ類の展翅方法と同じやり方が増えてきました)。フィールドに出かけたらお土産として持ち帰らないといけなかったもので、長期のフィールド調査では、朝から夕方まで採集をして、夜は遅くまでライトトラップをしてお土産をせっせと作っていたものです。また長期の採集旅行に出かけたくなりました。

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アカイエカ

DSCN5049今朝は一段と寒く感じましたが、寝不足もあるのではないかと思います。

寝不足なのはこいつです。月曜日の真夜中に耳元で羽音がしたので捕獲しました。ところが昨日の真夜中にも同じ原因で起きました。もちろん捕獲しました。蚊は夏のものと考えてらっしゃる一般の方が多いですが、アカイエカは12月頃まで見られ、成虫で冬越しします。

家の中に入ってきて次の春までどこかに身を潜めている場合が多いのですが、まだ吸血活動をしていたみたいです。2匹とも標本用に生存させておき、撮影もしておいたので、本日写真をアップしました。

会社用として、いろいろと害虫の生態写真撮影と標本用の採集に行きたいのですが、なかなか行くことができず、一般的な種ばかり増えていきます。貯穀害虫などはあまり手に入れることが出来ず、専門家でも個人コレクションに加えたいという方が多くいらっしゃいます。どこかいいところはないですかねぇ。オオツノコクヌストモドキなどは図鑑でしか見たことがありません。

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ヒカリコメツキ類

ヒカリコメツキの一種今週はやや冷えるそうですが、来週はかなり暖かくなり、秋が長引くようだと予想されています。エルニーニョ現象のおかげで暖冬になっているのでしょうか。冬の暖房代が少なくて助かるかもしれません。

今日の昆虫はヒカリコメツキです。南米に生息して、幼虫・成虫共に光ります。幼虫はシロアリの塚にトンネルを掘って生息します。熱帯のシロアリは塚を作る事が多く、その塚がヒカリコメツキによって発光している写真を見たことがあります。

ヒカリコメツキの一種2

シロアリの羽アリは光に集まる性質があることから、発光することにより、シロアリの羽アリを捕食していることが知られています。成虫も光るのですが、これはコミュニケーションとして使用されているのではないかと考えられています。ホタルと同じですね。

成虫の発光器は前胸背板の後角あたりにあります(写真では黄色く丸くなっている部分)。種類までは勉強不足で分かっていません。また保育社の「世界の昆虫」を見てみないと。

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