昆虫の分類14

今日は健康診断に行ってきました。いろいろと気になることはありますが、何もなければいいなぁと思ってます。

ガロアムシ2さて今日はガロアムシ目 Grylloblattodea です。学名はGryllo-がコオロギ、blattaがゴキブリを表していますが、両方のグループに似ている部分があるためです。和名の方は、この虫を中禅寺湖湖畔で発見したフランス外交官のガロア氏にちなんで1914年に名づけられました。翅がないので非翅目とか、コオロギに似ていることからコオロギモドキ目(蟋蟀擬目)とも呼ばれます。

この目は世界で5属39種ほどが確認され、日本では6種が確認されていますが、研究者によって扱い方が異なる場合もあります。成虫・幼虫共に湿潤で冷涼な森林中の石の下や朽木、地中や洞窟で見出すことが出来ますが、めったに見ることが出来ない昆虫です。また、不完全変態群の中でも原始的な形を保有しているとされています。肉食で、地中の小さな虫や他の節足動物を捕食します。

標本しか見たことがなく、生きた個体を見てみたいと思って探しているのですが、やはり見つけることが難しいようです。生存環境が冷涼な場所なので、昆虫館の冬場の展示にどうだろうかと考えている今日この頃です。

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昆虫の分類13

少し寒さが戻りましたが、以前ほどの寒さではないのでまだましですが。

ジュズヒゲムシ今日はジュズヒゲムシ目 Zoraptera です。この目は日本では確認されていないグループで、おもに熱帯~亜熱帯に分布しています。八重山諸島にはいるんじゃないかといわれ続けてますが、その生態などについては分からないことが多く、未だ発見されていません。熱帯地方ではジャングルの樹皮下などから得られることが分かり、熱帯に行った人はよく採集をしています。私も大学院時代にボルネオ調査に出かけたときに、たった1個体だけですが採集したことがあります。その後はインドネシアでも採集することが出来ましたが、標本にすることが難しく、写真のようになってしまいました。

ジュズヒゲムシ目は名前の通り、触角が数珠のようになっています。学名は純粋に翅のない昆虫という意味です。現在39種と9化石種が確認されているに過ぎない小さなグループです。ただ、アブラムシのように翅を持ったものも出てくることがあり、その翅の形態から他目との系統関係が論じられたことがありますが、はっきりとしたものではなく、多新翅群 Polyneoptera に属することが分かっています。分子系統解析が発達してきているので、‘bush’ から抜け出せるかもしれません。‘bush’というのは、不完全変態群は系統関係がはっきりせず櫛歯状の系統関係となり、その系統樹が草むらのように見えることから、こう呼ばれています。

化石が時代ごとに大量に残っていれば、推察は簡単なのですが、それが無いので面白い分野だと思っています。

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昆虫の分類12

朝から雨が降ってます。今日一日ずっと降るらしいですが、現場の方は大変です。風邪を引かないようにお気をつけください。

マダラカマドウマ今日の昆虫は、バッタ目 Orthoptera です。直訳するとOrtho- がまっすぐな、ptera は翅、という意味なので、日本で昔に呼ばれていた直翅目となります。バッタ目は前脚・中脚に比べて、後脚が長く跳躍に適した形となり、それが簡単に見分けるポイントとなります。人間で言う太腿にあたる部分がかなり太くなっています。バッタ目の中には、カマドウマ類、キリギリス類、ツユムシ類、コオロギ類、コロギス類、イナゴ類、バッタ類の仲間が日本にはいます。大体は前翅をこすり合わせて鳴き、日本は古代からこの鳴き声を愛でていました。ところが外国に行くと雑音としか聞こえないそうで、オノマトペが発達している日本ならではの文化かもしれません。写真1はマダラカマドウマ Diestrammena japonica Karny, 1842 です。湿気の多いところでよく見かけられ、床下などにいる場合があります。

トノサマバッタ日本ではトノサマバッタ Locusta migratoria Linnaeus, 1758 (写真2)という有名なバッタがいます。本種には孤独相と群生相があり、孤独相に比べて群生相の胸部の筋肉が発達し、飛翔に適している変異があります。横から見ると胸の部分が盛り上がっていて、体の色も褐色になります。これに関連した話では、アフリカ・中東・中国の農業に被害を与えているサバクワタリバッタ Schistocerca gregaria Forsskal, 1775 (Forsskalのaの上には○が付く)などは、個体群が増加して群生相になると、集団で移動して、移動した場所の植物すべてを食べつくして、次の場所へ移動するという行動が知られています。日本ではまだ被害は出てませんが、潜在的なものがあるのかもしれません。漫画では人間にも被害が及んでいますが、本当のところはどうなんでしょう。

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昆虫の分類11

日中は暖かくなるでしょうが、朝晩の冷え込みはまだまだ続きそうですね。「公園で日向ぼっこをしているお年寄りが少なくなった。」と近所のおじいちゃんが言ってました。寒いからしょうがないと思うのですが・・・。

トゲナナフシさて今日はナナフシ目 Phasmatodea (もしくはPhasmida) です。昔は竹節虫目と呼ばれてました。体型からそう呼ばれてました。しかし有名なコノハムシ Phyllium pulchrifolium Serville, 1838もナナフシの仲間ですが、ぜんぜん竹節ではないですね。目の学名の意味は、「幽霊」とか「(死者の)幻影」という意味です。木の枝や木の葉に擬態しているからでしょう。ナナフシは腹部が7節あるからと名前の由来は諸説あるそうです。写真はトゲナナフシ Neohirasea japonica (de Haan, 1842) です。箕面ではよく見かけられます。写真2枚目はコノハムシです。

コノハムシ2ナナフシはその他の昆虫とすぐに見分けが付きますが、学術的には内部構造などで特徴があるようです。また「単為生殖」というものを行い、メスだけで産卵をして子孫を残していきますが、環境条件などによりオスが産まれて交尾を行い、強い子孫を残していきます。

バッタやカマキリなどと同じように、緑色の個体や茶色の個体がいますが、周囲の環境の色によって変わるとか、季節によって変化することが遺伝子に組み込まれているとか言われており、分子研究が発達してきたので、その研究がなされているところです。コノハムシなどは東南アジアのマンゴー園に多くいて、オレンジ色や赤色などがいるそうです。マンゴーが紅葉するためのようです。伊丹市昆虫館がコノハムシの生態展示をしています(今日の伊丹市昆虫館のHPには掲載されていました)。食葉性昆虫なので、植物防疫所などの許可を得て、逃げ出さないように厳重に展示しているようです。

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昆虫の分類10

少しずつ寒さが和らいでますが、明日あたりから週末にかけて春のような気温になるそうです。お年寄りのために寒さが戻らなければいいのですが。

シロアリモドキ今日はシロアリモドキ目 Embioptera です。日本ではシロアリモドキ Oligotoma saundersii (Westwood, 1837)、コケシロアリモドキ Oligotoma japonica Okajima, 1926、タイワンシロアリモドキ Oligotoma humbertiana (Saussure, 1896)の3種が確認されています。名前のようにシロアリに似ているかというと、あまり似ておらず、触角は糸状でオスが有翅、メスはすべて無翅、カーストはありません。前脚フ節の第1節が肥大していて、そこに絹糸腺があり、自分の巣を糸で作ります。ここから、昔は紡脚目と呼ばれていました。

シロアリモドキ類は鹿児島の南部から南西諸島まで分布しています。樹皮の隙間や落ち葉の間で巣をつくり潜んでいます。私も何度も南西諸島に調査に出かけていましたが、翅を持った個体に出会ったことがありません。一度生きた翅のある個体を見てみたいです。

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昆虫の分類9

日本の上空には-12度の寒気があるらしいです。異常低温に気をつけるよう予報が出ていますが、現場の人は大変かもしれません。皆様もお気をつけください。

コブハサミムシ今日はハサミムシ目 Dermaptera です。世界で2000種ほどが知られ、熱帯・亜熱帯に多様なグループです。西ヨーロッパではわずか20種だけらしいです。ハサミムシ目は腹部末端の尾毛が変化して獲物を捕まえるための「はさみ」に変化しているので、すぐに他の昆虫と分けることが出来ます。写真はコブハサミムシ Anechura harmandi (Burr, 1904)です。日本ではこのハサミムシだけが子育てをすることが知られています。

コブハサミムシは、土の中で産卵し、雌は卵を守るようにして保護し、孵化した幼虫の餌になるといわれています。ほとんどの昆虫は卵を産みっぱなしですが、ハサミムシの他にはコウチュウ目のシデムシ、スズメバチやアシナガバチ、アリなどが子育てをしていることが知られています。

英語ではEarwigsといいますが、これはかつて熱帯でハサミムシが屋内に侵入して、寝ている人の耳に入り込んだのが原因です。wigは「かつら」を意味しますが、耳の中に入り込んでガサガサと毛の束が入り込んだような感じになるからでしょうか。どこかの文献に書いていたような気がするのですが、思い出せません。

 

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昆虫の分類8

まだましな寒さでしたが、週末は西日本で大荒れの天気になるそうです。公共交通機関もどうなることやら。皆さん、気をつけておきましょう。

オオヤマカワゲラさて今日はカワゲラ目 Plecoptera です。カワゲラ目は幼虫が渓流に棲むため、河川の上流の方に行けば見ることが出来ます。南極をのぞく全大陸に生息し、3500種類程度が知られています。細い円筒形で、上下に平圧された昆虫で、腹部末端には二本の尾毛があります。不完全変態で、水の中にいた幼虫は陸上に上がりトンボのように羽化します。

幼虫もよく似た体型ですが、呼吸する鰓は胸にあります。カゲロウは腹部側面、トンボは腹部末端に鰓があります。このことでグループが開けられていることもあるのですが、幼虫が水生なのは有翅類の基本とされています。しかし、水の中から陸上に上がり、そこから昆虫が派生したという考えがありますが、また水の中に戻るということに対して疑問を持っている方もいらっしゃるようです。系統分類学では、最節約原理というものがあり、人間の論理で説明しやすくしています。疑問がある人はその考えに立っているのでしょう。

当社がある茨木市には安威川があり、その上流は北摂山地で自然が豊かなところです。5月~梅雨明けぐらいに安威川の上流を散歩すればカワゲラを見ることが出来ると思います。

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昆虫の分類7

今朝も寒かったですが、一昨日に比べたらましでした。でもまた日曜から月曜にかけて寒くなるという予想が。いやですねぇ。

アキアカネさて今日はトンボ目 Odonata のお話。トンボは古い名前では「あきつ」と呼ばれていました。日本書記に「大日本豊秋津洲(おおやまととよあきつしま)」、古事記に「大倭豊秋津島(おおやまととよあきつしま)」とあり、国土をトンボに見立てた事が由来らしいですが、その当時にトンボが大群で飛んでいたからとか、いろいろな説があります。銅鐸の文様にも使用されていることから、古来より愛でられていた存在だったのでしょう。また日本のトンボは日本だけにいる種類(日本固有種といいます)が多く、特徴のあるトンボ相となっています。写真は赤とんぼとしても有名なアキアカネ Sympetrum frequens (Selys, 1883) です。オスだけが成熟すると赤くなります。

トンボ目は、複眼が大きく細い腹部をしている昆虫で棒が飛んでいるように見えたので「飛ぶ棒」からトンボと名前が付いたといわれています(これも諸説あり)。幼虫はヤゴで、幼虫・成虫共に肉食です。昨日お話したカゲロウ目と共に、翅を上に挙げるだけで畳めないグループで、旧翅類 Palaeoptera と呼ばれます。これは翅の根元にある翅底骨 Axirally sclerites が3枚あるのですが、これらの並び方が原始的で畳んで腹部の上に重ねることが出来ないということがわかっています。

日本にはさまざまなトンボがいますが、とりわけ有名なのはムカシトンボ Epiophlebia superstes (Selys, 1889)です。本種は大阪でも見ることが出来る種で、氷河期の生き残りとされています。ヒマラヤ山脈周辺のヒマラヤムカシトンボ Epiophlebia laidlawi Tillyard, 1921と中国・黒竜江省にEpiophlebia sinensis J.-K. Li et al, 2011という近縁種がそれぞれいて、世界で3種しかいません。

また、オニヤンマなどは自分のテリトリー(縄張り)を決め、パトロール飛行をします。そこに入ってきたほかのトンボを追い出したり、雌が入ってきたら交尾をしたりする行動が知られています。ですから、採集するときには同じ場所で待っているとまた飛んで戻ってきますので、うまくいくと採集することが出来ます。

 

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昆虫の分類6

今朝もひどく寒かったですね。会社に来るときは相川あたりから雪がちらついていました。会社に来ると所々うっすらと雪がありました。これでは子供たちも喜ばないでしょう。

フタオカゲロウの一種さて、今日はカゲロウ目 Ephemeroptera についてお話を。漢字で書くと「蜉蝣」と書き、字面から浮かんで漂ってる感じがします。ラテン語表記にある Ephemeros というのは、「命の短いもの」を意味します。羽化してきても、一週間~二週間ぐらいしか生きません。春先から5月ぐらいまでに出てきますが、生息する環境は河川なので、その周辺でよく見かけられます。都市部の河川では水質が悪いと生息することが出来ないグループです。写真のように非常に弱い昆虫で、標本でも壊れやすいのです。標本箱のフタを開けただけでこのような状態になってしまいます。

成虫は大きな複眼をしており、ターバンを巻いたような複眼、これをターバン眼と呼んでいますが、これをオスが有します。メスを見つけるためだと考えられます。口器は強く退化し、成虫のステージでは一切食物を摂ることはありません。

このグループの幼虫は水生なので、羽化するときに地上に出てきます。そのときに翅が濡れてしまうと飛べなくなるので、亜成虫という特別なステージがあります。亜成虫となって水中から出てきたカゲロウ類は、地上に出てきたあと、もう1回脱皮して翅を伸ばし、完全な成虫になります。写真の左隅の方に写っているものが亜成虫の脱皮殻です。田舎の川沿いを歩いていると建物の壁についているかも知れませんので、ぜひ見つけてみてください。

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昆虫の分類5

明日は気圧配置の移動により嵐になるそうです。いややなぁ、明日は山の中での仕事なのに・・・。

今日は分類の話の5回目、シミ目 Ztgentoma についてお話します。このシリーズ、すべての目についてお話しようと思っているので、33回ぐらいあると思います。地球上の全生物の67%が昆虫ですから、一番多様なグループであるといえます。

20150410092027シミ目は上から押し付けられたように平べったく、銀色の鱗粉を体全体にまとっています。このことから英語では Silverfish と呼ばれてます。上から見ると「しずく」のような形をしていて、湿気の多いところを好みます。繊維質・乾物を好んで食べる雑食性で、衣類・書籍・穀物などの害虫としても知られます。紙類を雲形の孔をあけたりしますが、貫通することはないので、これはフルホンシバンムシの仕業と考えてよいでしょう。昨日お話したように、イシノミ目は大顎の関節丘が1つでしたが、このシミ目からあとのグループは、大顎の関節丘が2つになります。イシノミ目までは大顎の動きがインク壺に指したペン軸のような動きをしますが、シミ目からは2点で固定されるため、左右に開くことしか出来ませんが、より強力な咬む力を獲得したことになります。

シミ目は小さなグループで、約500種程度しか記載されていません。屋内でよく見かけるのですが、実際には野外にも多く生息し、アリの巣などにも寄生しています。多くの原始的な形質を残しているので、昆虫の進化の研究の材料としても役立っています。日本にはいませんが、ムカシシミ科 Lepidotrichidae の Tricholepidion gertschi (Wygodzinski, 1961)がアメリカ・カリフォルニア州のダグラスモミ原生林に生息し、この種はバルチック琥珀の中に化石としても出土している古代からの現生種として有名です。

日本でよく見かけたのはヤマトシミ Ctenolepisma villosa (Fabricius, 1775) でしたが、だいぶ前からセイヨウシミ Lepisma saccharina Linnaeus, 1758 が優勢になっているとのことです。

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