昆虫の分類43

昨日は長女の中学の入学式でした。天気もよく気温も暖かかったので良かったです。

ヒメマルカツオブシムシ2今日はナガシンクイ系列 Bostrichiformiaのナガシンクイ上科 Bostrichoideaです。前回のマキムシモドキ上科もナガシンクイ系列でした。書くのを忘れてしまい申し訳ありません。ナガシンクイ上科には、ヒメトゲムシ科 Nosodendridae、カツオブシムシ科 Dermestidae、アミメナガシンクイ科 Endocatomidae、ナガシンクイ科Bostrichidae、シバンムシ科 Anobiidae、Jacobsonidaeの6科が含まれます。家屋害虫としてカツオブシムシ科、ナガシンクイ科、シバンムシ科が有名です。写真1のヒメマルカツオブシムシ Anthrenus verbasci (Linnaeus, 1767) は成虫は野外のキク類(アスターなど)の花粉を食べます。家屋害虫事典によると摂食せずに産卵することが出来る種で、屋内で発生し、産卵した後に野外に出てキク類の花粉を食するようです。その後、また産卵しに屋内に戻るかどうかは分かりません。幼虫は動植物の乾燥した遺骸を食します。

セマダラナガシンクイまた最近の分類体系では、これまで独立した科であったヒラタキクイムシ科 Lyctidaeなどはナガシンクイ科に含まれるようになりました。上に示しましたアミメナガシンクイ科もナガシンクイ科に含める研究者もいます。ナガシンクイ科はヒラタキクイムシ類以外は背中から見ると、頭部が前胸背板(前縁部はこぶ状隆起や突起を持つものがいます)で隠れてしまい鞘翅の先端付近は切断されたようになり、その部分にトゲがあるものがいます。写真2は奈良県の山奥で灯火に飛来したセマダラナガシンクイ Lichenophanes carinipennis (Lewis, 1896) です。材木を食害するものが多く、古民家などの壁に利用さヒラタキクイムシれている竹小舞などにはチビタケナガシンクイ Dinoderus minutus (Fabricius, 1775)などが発生し、駆除に出かけることもあります。写真3はヒラタキクイムシ Lyctus brunneus (Stephens, 1830) です。ラワン材など柔らかい材を好みます。

またシバンムシ科にはヒョウホンムシ科 Ptinidae が含まれ、亜科に降格しています。シバンムシ科にはジンサンシバンムシ Stegobium paniceum (Linnaeus, 1761)やタバコシバンムシ Lasioderma serricorne (Fabricius, 1792)(写真4)、ナガヒョウホンムシ Ptinus japonicus Reitter, 1877やヒセセマルヒョウホンムシ Gobbium aequinoctiale Boildieu, 1854などが一般家庭でよく見られるでしょう。これらは保存食品タバコシバンムシ3や乾燥動植物標本、昔ながらの畳(最近は中の芯としてスタイロフォームを使っているものもあります)などが被害を受けます。ヒョウホンムシは字のごとく標本も食べます。カツオブシムシ類やシバンムシ類などと共に分類学者を泣かせている甲虫です。知り合いなどが口々に言っていますが、貴重な標本(珍品など)からやられるので、嫌がらせかと思ってしまいます。私も研究対象は小さいので大丈夫ですが、趣味のコレクションでは何度も泣かされたことがあります。

 

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昆虫の分類42

昨日の帰りは雨が降らず良かった。しかし結局傘を一度も使わず、荷物になっただけでした。いつもどおり折り畳み傘にしておけばよかったのですが、振りがひどいと濡れてしまう私にはやや小さめの傘なのでやめたんです。うーむ、大き目の折り畳み傘を探してみよう。

マキムシモドキ今日はマキムシモドキ上科 Derodontoideaです。マキムシモドキ上科は、マキムシモドキ科 Derodontidae だけで構成されます。マキムシモドキ科には3亜科があり、これまでに日本からは2亜科が記録されていました。といっても、日本産はマキムシモドキ Peltastica amurensisn Reitter, 1879、モンヒメマキムシモドキ Deordontus japonicus Hisamatsu, 1964、アラメヒメマキムシモドキDerodontus tuberosus Hisamatsu et Sakai, 1985の2属3種だけの小さな科でした。しかし2011年に大阪市立自然史博物館の初宿さんらによって3新種が記載されました。和名は確認するのを忘れてしまいましたが、3新種とも3つ目の亜科に属するもので、モンヒメマキムシモドキLaricobius osakaensis Shiyake, Montgomery, Havill, et Leschen, 2011、Laricobius naganoensis Lechen, 2011、Laricobius kovalevi Leschen, 2011です。

L. osakensisは栂の木を寄主とするツガカサアブラムシAdelgis tsugae (Annand, 1928) を捕食することが分かり、生物農薬として北米に導入できるかどうかの調査で来日した研究者とともに採集されました。私もその当時一度だけ採集に参加させていただいたのですが、一番寒い時期に神戸市立植物園に行って採集しましLaricobiinae亜科た。寒くて寒くて採集品をすべてお渡しした覚えがあります。1個体でも取っておけばよかった。写真は上から順にマキムシモドキ(ヒラタマキムシモドキ亜科)、モンヒメマキムシモドキ(ヒメマキムシモドキ亜科)、Laricobiinae亜科です。これらの写真も昔作ったものから借用しました。

 

さて、昨日の問題の正解を記します。上段左からコメツキダマシ科、ヒゲブトコメツキ科、コメツキムシ科、コメツキムシ科。下段左からベニボタル科、ホタルモドキ科、ホタル科、ジョウカイボン科です。下段は鞘翅が柔らかいので、軟鞘類と呼ばれています。また一番最後につけたおまけの写真は、ボルネオ島で採集したサンヨウベニボタルの一種の雌です。ネオテニーといって幼虫の形態のまま成熟する種です。オスはちゃんとした成虫に変態しますけど、見たことがありません。

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昆虫の分類41

 

今朝は会社に着くまで雨が降らなかったので助かりました。帰りもそうだったらいいんですけど。

今日はコメツキムシ上科 Elateroidea です。コメツキムシ上科にはナガハナノミダマシ科 Artematopodidae、Brachypsectridae、クシヒゲコメツキダマシ科Cerophytidae、コメツキダマシ科 Eucnemidae、ヒゲブトコメツキ科 Throscidae、コメツキムシ科 Elateridae、Plastoceridae、Drilidae、Omalisidae、ベニボタル科 Lycidae、Telegeusidae、オオメボタル科 Phengodidae、ホタル科 Lampyridae、ホタルモドキ科 Omethidae、ジョウカイボン科 Cantharidae、Podabrocephalidae、Rhinorhipidaeの17科も含まれる大所帯です。科までの見分け方は大まかにコメツキムシ類、ホタル類、ジョウカイボン類と分けることは出来ますが、きっちり行う場合には細かい部分を見ないといけません。触角の位置、頭楯周辺の縫合線や後胸上側板などいくつかの形質の合致で科まで落とせるのですが、日本に産しない科は見ていないので何ともいえません。並べてみると一般の人には一緒のグループと思われますが、経験を積めば簡単に日本産のものはどの科か、分かるようになります。

オニコメツキダマシヒゲブトコメツキコメツキムシヒカリコメツキの一種

ベニボタルホタルモドキムネクリイロボタルアオジョウカイ

 

では、上の8枚の写真はどの科でしょうか?少し画像が粗いものもありますが、お許しください。正解は明日発表します。おまけの問題も付けときます。下の写真は何科でしょう?

サンヨウベニボタル

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昆虫の分類40

日中はかなり暖かくなってきましたね。でも春一番の報せを聞いていないのですが、もう終わりましたっけ?明日は雨の予報ですし、気を緩めずにがんばりたいです。

マルモンマルトゲムシ今日はマルトゲムシ上科 Byrrhoidea です。この上科にはマルトゲムシ科 Byrrhidae、ヒメドロムシ科 Elmidae、ドロムシ科 Dryopidae、Lutrochidae、チビドロムシ科 Limnichidae、ナガドロムシ科 Heteroceridae、ヒラタドロムシ科 Psephenidae、Cneoglossidae、ナガハナノミ科 Ptilodactylidae、ダエンマルトゲムシ科 Chelonariidae、Eulichadidae、ホソクシヒゲムシ科 Callirhipidae の12科が含まれ、幼虫が水生のものも含まれます。形態も多様で、平べったいものからぼってりと膨隆したものまであります。写真はマルトゲムシの一種 Byrrhus sp. で、ぼってりとした体型のものは高山帯Eulichadidaeなどで見られるようです。私も生きたものを見たことはありません。体型的に山登りが苦手なもので・・・。写真2はベトナムで採集してきたEulichas sp. です。写真3はリュウキュウダエンマルトゲムシ Chelonarium ohbayashii M. Satô, 1964です。

大阪の近辺では山手の川沿いに行くとヒメドロムシ科やナガハナノミ科の甲虫が見られます。これら水生甲虫に関する研究は、かつて佐藤正孝博士が研究しておられましたが、今はその愛弟子の吉富博士が研究を引き継いでおられます。私の水生甲虫は今、吉富さんのところに嫁いで行ったものもあれば、同定のために預かっていただいているものもあります。もう少しいろいろと図鑑的に見せることが出来ればいいのですが、ダエンマルトゲムシ勉強も不十分で、形態的な特徴などにも言及できず申し訳ありません。甲虫全般の系統進化について、手に入れたい文献はあるのですが、専門書なので高価なんですよね。手に入れることが出来たら、またお話したいと思います。

 

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昆虫の分類39

先週末は甲虫学会と昆虫学会がありました。甲虫学会では私が「箕面の甲虫」について発表し、暫定的に1207種の甲虫が記録されています。しかし環境の変化に伴い、いなくなった種もいれば、新たに生息を広げている種もあり、もう少し精査が必要です。参加者の多くは箕面で採集されていらっしゃったこともあり、いろいろご教示いただきました。この場を借りて御礼をさせていただきます。ありがとうございました。昆虫学会は大阪府立大学(私の母校)で応用動物昆虫学会との合同大会でしたので、合間を縫って来場していただいた方もいらっしゃいました。

アオマダラタマムシ少し日が開きましたが、今日はコウチュウ目タマムシ上科 Buprestoidea です。タマムシ上科にはタマムシ科 Buprestidae の1科のみで構成されます。タマムシ類は金緑色のきらびやかなものから、つやのない黒色をしたものまでさまざまな色彩があります。個体によっては色彩変異もあり、同定は他の甲虫に比べて簡単なものもありますが、慣れないと難しいでしょう。古くは奈良時代の玉虫厨子に利用されたり、刀の柄や首飾りなどに使用されていました。また、タンスの中に入れておくと服が増えるとか、防虫になるとか、民間伝承もあります。幼虫は樹木の内部を食害することから、森林害虫とされることもムツボシタマムシあります。皆さんがよく知っていらっしゃるヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima fulgidissima (Schönherr, 1817) などはサクラやエノキを食害します。写真はアオマダラタマムシ Nipponobuprestis amabilis (Snellen van Vollenhoven, 1864) です。大阪では箕面の方で見られましたが、最近は出て行っていないせいか、私は見てません。

小型でも綺麗な種が多く、写真2のムツボシタマムシ Chrysobothris succedanea E. Saunders, 1873 や写真3のシラホシナガタマムシ Agrilus alazon Lewis, 1892なども綺麗。このようなタマムシ類は愛好家もシラホシナガタマムシ多く、海外のタマムシを集めていらっしゃる人のコレクションを見るとすごいなぁ、と思ってしまいます。特にアフリカのマダガスカルに生息するカワリタマムシ類などは形も異なり、面白いです。ほとんどのタマムシは木材から脱出しやすいように細長い体型をしていますが、カワリタマムシ類は平べったい楕円形をしています。一度調べてみてください。世界のタマムシや日本のタマムシについては、むし社から図鑑が出版されています。

 

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昆虫の分類38

今日もぽかぽかの陽気になりそうです。初春の昆虫の採集に行くことができてない・・・。早く行かないと行けませんね。

ナガフナガタムシ科今日はコメツキムシ系列のナガフナガタムシ上科 Dascilloidea です。この上科にはナガフナガタムシ科 Dascillidae とクシヒゲムシ科 Rhipiceridae の2科が含まれます。日本にはクシヒゲムシ科だけが確認されています。ナガフナガタムシ科は東南アジアなどにで採集したことがありますが、持ってくるのを忘れてしまいました。後日この記事を編集しなおして写真を掲載します。とりあえず私の作成した書類からお借りした写真を載せます。種は分かりません。

クチキクシヒゲムシクシヒゲムシ科は日本から3種、クチキクシヒゲムシ Sandalus segnis Leiws, 1887 (写真2)、アマミクチキクシヒゲムシ Sandalus kani Sakai et Sakai, 1981、ヤエヤマクチキクシヒゲムシ Sandalus takizawai Nakane, 1985 が記録されています。これらは狙って採集できるものではなく、私も採集したことはありません。で、これもナガフナガタムシ科と同じように書類から拝借します。

クシヒゲムシは森林害虫とされていたり、海外ではセミの幼虫に寄生したりするものがいます。立ち枯れなどで静止しているのが見られると図鑑に書いてありますが、見たことありません。どこかのマレーゼトラップの結果を見ていたら入っていたので、やってみたいなぁ。FITでも入ればいいのですが。

その名の通り、触角が櫛のようになっていますが、このような形態は他の甲虫にも見られます。よく言われるのがフェロモンを感知するためだと言われますが、実際のところ、どうなんでしょうね。お互いを見つけにくい種類なら分かりますが・・・。

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昆虫の分類37

サクラが咲いてきて春の様子ですね。寒の戻りがあると言われてますので、服装には気をつけないと。

今日はコメツキムシ系列 Elateriformia です。コメツキムシ系列にはマルハナノミ上科 Scirtoidea、ナガフナガタムシ上科 Dascilloidea、タマムシ上科 Buprestoidea、マルトゲムシ上科 Byrrhoidea、コメツキムシ上科 Elateloideaの5上科が含まれます。今日はマルハナノミ上科の説明をします。

ミフシタマキノコモドキマルハナノミ上科には、ニセマルハナノミ科 Decliniidae、マルハナノミダマシ科 Eucnetidae、タマキノコムシモドキ科 Clambidae、マルハナノミ科 Scirtidae の4科が含まれます。すべて日本から知られています。特にニセマルハナノミ科は1996年に酒井博士と佐藤博士によって初記録となった甲虫で1種しか知られていません。写真1はミフシタマキノコムシモドキ Acalyptomerus asiaticus Crowson, 1979 だと思います。本属の再検討がされた際に、日本産の標本を検視していないようなことを聞きました。甲虫図鑑Ⅱ巻の検索に従っておきます。

マルハナノミ科の一種2マルハナノミ上科の種を見ていると、体と比較して前胸が小さくなり、頭部が前胸に覆われて上から見えにくい感じがします。その他のグループにも見られますが、進化の上では何か意味を持っているのかもしれません。マルハナノミ科は今、外国産を含むほとんどの採集品が愛媛大の吉富博士(水生甲虫全般を研究対象にしてらっしゃいます)のところに出向いておりまして、同定をして貰うために預かっていただいている最中です。写真2はマルハナノミ科の一種で、粘着トラップで捕獲されたものをいただきました。吉富さんが2005年に出版したモノグラフを購入できなくて後悔しています。

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昆虫の分類36

昨日から雨が降ってますね。こういう時はカビが発生しやすいので、お気をつけください。私も標本にカビが生えないか心配です。今日は標本チェックの日かなぁ。

DSCN3479今日はコガネムシ上科 Scarabaeoidea です。コガネムシ上科には、クワガタムシ科 Lucanidae、クロツヤムシ科 Passalidae、コブスジコガネ科 Trogidae、ニセコブスジコガネ科 Glaresidae、フユセンチコガネ科 Pleocommidae、ホソマグソクワガタ科 Diphyllostomatidae、センチコガネ科 Geotrupidae、Belohinidae、アカマダラセンチコガネ科 Ochodaeidae、マンマルコガネ科 Ceratocanthidae、アツバコガネ科 Hybosoridae、ヒゲブトハナムグリ科 Glaphylidae、コガネムシ科 Scarabaeidaeの13科が含まれます。おもに熱帯・亜熱帯で多く見られるグループですが、ホソマグソクワガタ科は1属3種でアメリカ・カリフォルニア州だけに分布、Belohinidaeは1属1種で南マダガスカルのみという特異なものもいます。そんな標本は当然持っていませんので、インターネットなどでご覧ください。写真1はかつてはブームにもなったオオクワガタ Dorcus hopei binodulosus Waterhouse, 1874 です。最近採集したのですが、あまりにもきれいなので、飼育品を放虫した可能性があり、最初は興奮していたのですが、顕微鏡などで観察しているうちにいやな気分になったことを覚えています。

20150805113454その他にもマグソクワガタやセンチコガネ、コガネムシ類の標本の写真を載せようと思ったのですが、写真撮影していなかったことに気付いてしまいました・・・申し訳ないです。以前にも掲載した能勢のカナブンを載せておきます。フンコロガシは古代エジプトから神の化身と崇められてきたことは以前にもお話しました。そんな時代から近代のカブトムシ採集まで、コガネムシ類は人々の身近に存在した甲虫の一つであるといえるでしょう。コガネムシ上科の触角は面白い形をしています。団扇のようになっているものもいますから、一度捕まえてみて比較してみると面白いですよ。

 

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昆虫の分類35

昨日は上の娘の卒業式でした。結構BGMの効果もあってか、ウルッと来たときもありました。ついこの間まで幼稚園児だったのにと、時間が早く流れるのを感じてしまいました。

DSCN2648今日はハネカクシ上科 Staphylinoidea です。ハネカクシ上科には、ダルマガムシ科 Hydraenidae、ムクゲキノコムシ科 Ptiliidae、ツヤシデムシ科 Agyrtidae、タマキノコムシ科 Leiodidae、シデムシ科 Syrphidae、ハネカクシ科 Staphylinidaeの6科が含まれます。かつて甲虫図鑑に掲載されていたヒゲブトチビシデムシ科 Colonidae、チビシデムシ科 Cholevidaeはタマキノコムシ科に含まれてしまいました。また、コケムシ科 Sydmaenidaeとアリヅカムシ科 Pselaphidaeはハネカクシ科に含まれてしまいました。これまでは外部形態や交尾器などで分類されていたものが、幼虫の形態や刺毛配列などに新知見により、包含されてしまいました。写真1はナカアカヒゲブトハネカクシ Aleochara curtula Goeze, 1777 が公園内で撒かれたネコのえさに群がってきた様子です。このあと、大量に飛来しました。

Cissidium ikeuchii_maleしかし、ハネカクシ科にはかなりの新種が確認されて入るものの、記載がされていない(というか追いつかない)という状況になっています。ハネカクシ上科は非常に多様で大きなグループとなっています。私が研究しているムクゲキノコムシ科にも多くの新種を確認していますので、早く記載しないといけないと一人あせっています。写真2はイケウチヒサゴムクゲキノコムシ Cissidium ikeuchii Sawada, 2008 で私が記載した種です。私もこれまでに17種記載しましたが、まだまだこれからです。がんばらなくては。

ハネカクシ科には32亜科があり、ある程度はどの亜科にDSCN2666含まれるかが分かるのですが、そこから種へ同定するには困難になります。2013年に名立たるハネカクシ研究者により日本産ハネカクシ科総目録が論文として発表されて全容が解明されつつあります。しかし日本産のハネカクシ科の検索表がないので、度の属に含まれるのか、どの種に相当するのかが分かりません。専門家に依頼するしかなく、難しいですね。私もようやくある程度のアリヅカムシ類なら分かるようになって来ましたが、これだと確信する決め手がなく、不安だらけになります。過去に同定していただいた標本と比べてみていますが、数多くの標本を見ていると何か違うように見えてきて、困ったものです。写真3は「これぐらい分かるようになりなさい」と棒博士から諌められたアナズアリヅカムシ Batriseniola dissimilis (Sharp, 1874) です。

 

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昆虫の分類34

かなり冷え込みましたねぇ。昨日の夕食は鍋にしました。そのせいかどうかは分かりませんが、今朝の玄関あたりの結露はひどかったです。結露がひどいとカビが発生しますので、皆様もお気をつけください。

DSCN2672今日はコウチュウ目多食亜目ハネカクシ系列のお話です。ハネカクシ系列にはガムシ上科 Hydrophiloidea とハネカクシ上科 Staphylinoideaが含まれます。ガムシ上科にはガムシ科 Hydrophilidae、エンマムシダマシ科 Sphaeritidae、エンマムシモドキ科Synteliidae、エンマムシ科 Histeridaeの4科が含まれます。ガムシ科には陸生と水生のものがいます。陸生のものは落ち葉の中や動物のフンで見ることが出来ます。触角よりも小あごひげのほうが長く、一般の方には逆に見てしまうでしょう。ガムシ科の触角は第9節が杯状になっており、これは水生の種が水面から空気を取り入れるときに水面の表面張力を破るためのものとわかっています。空気を取り入れた後は、体の下面に細かい毛があり、ここに空気を捕まえておいて呼吸します。これをプラストロン呼吸といいます。ゲンゴロウは鞘翅と腹部の間に空間があり、そこに空気をためておき、アクアラングのように呼吸をしています。

DSCN2669エンマムシダマシ科は日本から1種しか確認されていません。その唯一の種、エンマムシダマシ Sphaerites glabratus Fabricius, 1792 は北海道の大雪山と利尻島からしか見つかっていません。またエンマムシモドキ科もエンマムシモドキ Syntelia histeroides Lewis, 1882 ただ1種が確認されています。私はエンマムシモドキを九州で1個体採取したことがあるだけです。エンマムシ科は現在約3800種が世界から確認されており、日本からは114種が知られています。エンマムシ類は、アリの巣・動物のフン・海岸のゴミの下などから見出されます。写真1と2は、土壌中から採取されたアカツブエンマムシ Bacanius niponicus Lewis, 1879 だと思います(ちゃんと確認が出来ていません)。北海道大学総合博物館の大原博士の話によると、日本産Bacanius属には新種が混じっている可能性があり、大原博士も現在調査中だとのことです。採取してきてとりあえずリンゴを入れてみたのですが、リンゴ自体を齧っているような雰囲気はありませんでした。クロバネキノコバエなどの幼虫でも発生していたら、と勝手に予想してます。

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